2021年11月28日 (日)

落花は枝に還らずとも

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秋月悌次郎って、それほど知名度が高いわけではありませんよね。私も名前は知っている程度でしたが、どんな一生だったのか、興味はありました。上下巻あって長いし、資料の引用が多くて、そうろう文を何度も読まなくちゃいけないし、何かあると悌次郎はすぐ漢詩作るし、決して読みやすい本ではありません。

で、面白くはなかったのかというと、とても面白い本でした。
会津物はたくさんありますが、文官として容保を支えた本は多くありません。他藩にも知人が多かった悌次郎は外交官として、八月十八日の政変を成功させますが、佐幕派から嫌われ蝦夷地に左遷されます。

その後、再び召喚されますが、薩長同盟が終わった後で、いくら秋月でもどうにも出来ず、その後の会津はよく知られた道をたどります。
政変が日々変わる時期に、悌次郎が京都にいなかったこと、逆に言えば、身分にこだわり、下の者の意見を聞かない会津の風潮。そして容保の不器用ともいえる真っ直ぐな生き方。それらがすべて負になって会津戦争になってしまったのかな、と思います。

この本で一番興味を持ったところは、降伏を決めた後のことでした。テレビなどでは降伏で終わりますが、その後に、とても大変な仕事がありますよね。使者になるのも命がけだし、儀式の手違いは許されない。そのどちらも、悌次郎は抜かりなく手配します。

猪苗代湖の謹慎所を抜け出し、長州の奥平謙輔に会いに行き、山川健次郎らを託す手配をします。越後にいた奥平に、会いに行った時に読んだ詩が、有名な「北越潜行の詩」です。本の題名「落花は枝に還らずとも」とは、花は散っても、種を残し、そこから新しい芽を出すという意味です。晩年は熊本の第五高等学校の先生になり、同僚だったラフカディオ・ハーンは「神のような人」と記述しています。

ずっと会津物を読んで、また「八重の桜」を観て、一つの出来事でも、いろいろな角度から見ると違った見方が出来ると思いました。歴史に「もしも」はありませんが、もしあの時、〇〇だったら、会津は賊軍と呼ばれることはなかったと思うことが度々でした。

 

2021年11月 9日 (火)

不如帰 徳冨蘆花

私の会津検索はまだ続いておりまして、以下こちらを参照させていただいきました。
で、なぜ突然「不如帰」なのか。もしかしたら、「八重の桜」で既出なのかもしれませんが、私は未見なので、びっくり。大山捨松を調べていた時に、「スキャンダル」の文字が。えっ、何々?とまた週刊誌的な興味

徳冨蘆花の「不如帰」は大山家と三島家をモデルにしたもので、捨松は意地悪な継母として、三島未亡人は若い嫁をいじめる姑として描かれています。なぜというと、蘆花の私怨のようで、蘆花は山本覚馬の娘と恋におちました。山本覚馬は「八重の桜」の主人公、山本八重子の兄です。その頃、新島襄と結婚して新島八重子になっていましたが、この恋に大反対。恋を邪魔された蘆花は、敵意を同じ会津藩出身の大山捨松にぶつけたそうで。これが本当なら蘆花ってどうしようもない最低野郎。

それで、「落花は枝に還らずとも」を中断して、読んでみました。「不如帰」、いまは青空文庫で読めます。
これが面白かったのですよ。若い男女の悲恋物語。これは、明治時代にベストセラーになるはずだわ。主人公の浪子と武男の純愛、それを邪魔しようとする悪役もいて、筋書きがおもしろい。文語調で書かれた日本語も美しい。一気に読めてしまいました。まぁ、心に残る名作ではないですが、ライトノベルを読んだような気持かな。

武男のモデルの三島弥太郎の弟は「いだてん」で生田斗真さん演じた三島弥彦さんだそうです。ついでに、会津検索の元になった、山川浩は出来る男には違いなさそうですが、かなりの変人だったようで、「三毛猫のオスをつくる」と屋敷を猫屋敷にしてみたり、カケスをオウムのようにしゃべらせてみようとしたり、「何やってんねん」のお方。だからかえって山川浩のこと、知りたくなってしまう。

 

 

2021年11月 5日 (金)

獅子の棲む国

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このところ、会津ものをよむことが多くて。私は決して会津好きではありません。殿様にもう少し先を読む力があったらとか、臣下にもっと優秀な人がいれば、女子供まで巻き込んだ会津戦争避けられたとずっと思っています。でも、会津にも優れた人材はたくさんいた。明治以降にも活躍した会津出身者は、どうやって立身出世したんだろうという思いはずっとありました。

獅子の棲む国(秋山香乃)
これは会津藩家老の山川浩を中心に描いたものです。斗南藩のトップになってからの苦労は並大抵のものではなく、おから騒動も本当のことのようです。土佐の谷干城に請われて陸軍に出仕します。西南戦争で活躍します。その後も知りたかったのですが、この本は西南戦争で終わっています。新選組の斎藤一や実際の歴史上の人物を絡ませて、読み応えある本でした。

 

修理さま雪は(中村彰彦)
会津戦争で運命が変わった人々を描いた7編。表題は、鳥羽伏見の戦いの敗北の責任をとって自害した神保修理の妻、雪子を描いたもの。その他も悲しい話が多いのですが、会津の人たちの決意がわかる本です。

 

女たちの会津戦争(星亮一)
会津戦争と斗南藩移住の凄絶な生活、そしてそれに耐えた明治になって活躍した女性たち。いろいろな女性が出てきます。女性の強さを教えてくれる本です。

 

中村先生も星先生も、会津物が多いです。今読んでいるのは中村彰彦の「落花は枝に還らずとも」。主人公の秋月悌次郎はとても秀才だったらしいですが、突然、歴史の表舞台から姿を消します。何があったのか興味津々。

 

2021年10月21日 (木)

殿様は「明治」をどう生きたか

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私、こういう後日談が好きなんですよ。戊辰戦争で勝者も、敗者も、廃藩置県で領地没収・家臣いなくなりで、殿様はどうしていたんだろうと前から興味ありました。

松平容保が日光東照宮の宮司になったのは知っていたのですが、あとは「へぇ」とか「ふーん」ばかり。おもしろかったです。一番異色だと思ったのは、上総国請西藩主(今の木更津あたり)林忠崇。困窮のあまり農業したり、役人になったり、商人になったり。どうも、お仕事長続きしない方のようです。このお殿様、昭和まで生きて「最後の大名」として取材を受けたりしています。他にも、明治政府で手腕を発揮したお殿様。個人の能力で、いかようにも力は発揮できる。2巻まであります。

この本には載っていませんが、個人的に興味あるのが、会津藩の家老山川浩。斗南藩に国替えになった後、生活は困窮を極め、おからを手に入れただけで、藩士から責められる生活だったようです。兄弟を里子に出したり苦労したようです。

西南戦争で功をたて、最終的には陸軍少将になり貴族院議員になります。この山川家はみな優秀だったようで、弟の健次郎は東京帝国大学の総長になり、里子に出された捨松は官費でアメリカ留学し、後に大山巌と結婚します。この結婚は兄の浩は「薩摩人との結婚許さん」と反対だったようですが。ドラマにもなりそうな山川家。だれか、小説にしてくれないかな。(山川浩の小説はいくつかありますが)

 

2021年3月 1日 (月)

よつばと!

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27日、「よつばと!」の最新巻15巻が出ました。
この漫画大好きなんです。

小岩井よつばが、とーちゃんと東京の郊外に越してくるところから始まります。
ちょっと変な5歳児。なんにでも全力投球。
とーちゃんは、翻訳家(マイナーな言語らしい。よつばはこんにゃく屋と勘違いしています)家でお仕事。
小岩井家にはかーちゃんはいなくて、よつばは実子ではないらしいが、
そんなことはどうでもよくて、「普通という奇跡」が毎日よつばの周りで起こります。

ちょっとネタバレですが、石を拾いにいくというよつばに
とーちゃんは車で1時間半もかけて茅ヶ崎まで連れていこうとします。
それを知った隣の女の子「私も行きたい」
「ただの石を拾いにいくだけだよ」
「おもしろそう」とみんなで出かける。

といった、漫画です。
始めの10巻くらいまでは、娘が買っていたのですが、
それから新刊が出るたびに私が買っています。が、とにかく遅筆。
14巻が出てから、約3年かかって15巻がやっと出ました。

1巻は「明日から夏休み」だったのが、15巻でやっと12月、よつばランドセルを買うまできましたが
なんと18年。よつばが小学校入学で終わるのだろうか、あと何年かかるのだろうか。
全く、わからない。でも、この「よつばと!」最終回になったら寂しいだろうな。
気長に待つほうがいいな。


2021年1月24日 (日)

最後のロシア皇帝

アナスタシアを観てから、ロシア革命のこと知りたくなって、本を二冊。
二冊とも面白かったです。

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この本は、ニコライ二世について書かれたものですが、
ニコライ二世について好意的な見方が目立ちました。
凡庸ではあったが、皇帝の仕事をこなし、何より家族を愛した人物であったと。

「歴史にもしもはないが、もっと緩やかな改革を認めていたら
ロシアは、穏健な立憲君主制や議会民主制度になっていたかもしれない」
という言葉がありましたが、
歴史に「もしも」はないわけで、現実的に一家銃殺という悲劇で終わったロマノフ王朝。

その後、70年以上も遺体のありかさえわからなかったということで
生まれたアナスタシア伝説。
この本は、その後現れたアンナ・アンダースンは、アレクサンドラ皇后の血縁のフィリップ殿下とDNAが一致せず
ということで結論づけされました。

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こちらの本は、アンナ・アンダースンはアナスタシアであると結論づけされていて、
アナスタシアが生きていては困るいろいろな思惑を一つずつ、消していった本です。
少し強引かなとは思いますが、「あり得ないことではない」と思わせる本です。

当事者がもう亡くなった今、真相はわからず仕舞いで、
今後も「アナスタシア伝説」は、人々の心の中に生きるのでしょうか。

2020年11月 2日 (月)

十時半睡事件帖

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前にも書いた「十時半睡事件帖」
島田正吾さんの演技が絶妙で、とても楽しめるテレビ番組でした。
その時に、原作読みたいなと思ったのですが、もう中古本しかなく、
仕方なく、電子化されていた一作目「包丁ざむらい」だけ手に入れて、楽しんでいました。

久しぶりに、アマゾンを検索していて、全7作が電子化されているのを知りました。
テレビでは息子は江戸にいる設定でしたが、原作では同居していて、
4作目で、その息子弥七郎が、不祥事(不倫)を起こして、半睡は総目付を辞めてしまいます。

5作目からは、江戸の総目付を命じられて、舞台は江戸へ。
そこで、また新しい出会いがあり、
時には情けもあり、時には非情な裁きもありの半睡裁きを楽しんでいました。

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最後の「東海道をゆく」は、弥七郎が病気になり、半睡は国元に帰るのですが
「弥七郎が死ぬ定めなら、それがしが急いだところで死にまする」という死生観で、
東海道を陸路で行くことにします。

道中記といった趣で、ところどころ赤穂浪士の仇討ちや平家と源氏の違いなど、
半睡の言葉を通して、一般の評価とは違う、作者の考えが垣間見えるところが興味深いです。
途中で弥七郎の労咳が見立て違いとわかり、不惑の心境に至っていなかったと喜ぶ半睡。

作者死亡のために浜松で終わってしまいますが、登場人物の、その後がいろいろ想像されて、
余韻が残る最後です。


2020年5月15日 (金)

MF動物病院日誌

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先月と今月、驚くほどお金使っていません。
スーパーに日常の買い物にいくだけだし、洋服も買わないし、電車にも乗らないし。
舞台を観に行かないと、我が家の家計もずっと楽になるな、なんて考えています。

そんな中、2日で3千円ほど、使いました。
もともと、動物ものの漫画が好きで
「動物のお医者さん」や「ぴくぴく仙太郎」など、今でも家にあります。
この「MF動物病院日誌」3冊だけ、うちにありました。
娘が買ったのか、私が買ったのか、定かではないほど昔の漫画です。

絵があまり好みではない、表紙がダサい、そもそも「MF動物病院」というネーミングに惹かれない
といった理由で、(たぶん)買うのを止めたんだと思いますが、
3冊読んだら、続きが気になって「昔の漫画だし、もう絶版だろうな」と思ったけれど、
Kindle版がありました。で、今のところ9巻まで買ってしまいました。
漫画ってすぐに読めちゃうからね。

動物病院だけあって、虐待された動物がいたり、悲しい別れがあったり、切ない話も多いのですが
動物の命を守ろうとするお医者さんやAHT(アニマル・ヘルス・テクニシャン)が温かくて、
ついつい読み進んでしまいます。
26巻まで、あるのよね。全巻買うような予感がする。

前に書いた「陳情令」だいぶ話進みました。
16年前にウェイ・ウーシエンが崖から飛び降りることになった原因もわかったけれど
実の姉のように慕っていた師姉も温情も死ぬことになって、切ない。
今週から16年後になって、第二幕といったところです。

ほとんど観ていない夫「どうして、これとこれが戦うの?」
「一言では説明しにくい、簡単に敵味方じゃないから、おもしろいの」
はっきりいうと、ウザイ。





2020年3月13日 (金)

淋しいおさかな

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NHKの「おはなしこんにちは」で放映された。別役実さんの童話集を22話、集めたものです。
このお話には悪人は出てきません。そして、みな一生懸命に生きています。
ただ、そのお仕事がちょっと変だったり、意味がないものだったりすることで、
思いもよらない結末になる。ちょっと悲しくて、ちょっとクスッと笑えるお話です。

作者の意図とか、言いたかったことは何だろうとか深読みしてしまいますが、
そういう読者を「ふふっ」と笑っている別役さんの顔が見えるような気がします。

「白い小さなロケットが降りた街」
「猫貸し屋」
「迷子のサーカス」
「一軒の家・一本の木・一人の息子」
切ない終わり方ですが、そんな中にも、心が温かくなるお話でした。

「魔法使いのいる街」
「みんなスパイ」
「可哀そうな市長さん」
などは、クスッとしてしまう結末です。

果たして子供がどれだけ理解できたかは、わかりませんが、
一視聴者の私が、ずっと心に残っていた。こんな人が他にもいるとしたら、
半世紀も前に、こんな童話を書いた別役さんにも
放映したNHKにも「いいお仕事」だったのではないでしょうか。

朗読していたのは、田島令子さんだったようで、中山千夏さんは私の記憶違いのようです。
こちらで「おはなしこんにちは」への思いを田島さん自身が、語っていらっしゃいます。

2020年2月 9日 (日)

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

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私、文楽のこと何も知らなくて
義太夫の語りが浄瑠璃なのね、その浄瑠璃の作者を描いた本なのね、程度の認識しかありません。

この本、始めは退屈だったのですよ。
近松半二の成り行きまかせみたいな生き方に、共感できなくて。
図書館に返すまでに、読み終えるのだろうかと。
100ページ過ぎるあたりから、一気でした。

演目がかかるまでに、その本を書いた作者がいて、その演目をかけるかどうか決める座本がいて
人形遣いや義太夫語り、三味線が三位一体となって、それを観にいく観客がいて、と
いつの間にか、私も道頓堀のざわめきの中に立っていました。

大島真寿美さん、高校の後輩なんですよ。(私、高校は名古屋なんです)
直木賞とった後輩がいるって、ちょっと誇らしくて読んでみました。
先日から大学の先輩だの、高校の後輩だの繋がりで、せっせと図書館通いしています。